AIが失敗したら、プロンプトに注意書きを足す。それを繰り返すうちに、指示が長くなり、何が効いたのか分からなくなる——業務用エージェントで起こりやすい問題です。
AWSは2026年9月16日、AgentCoreのシステムプロンプト最適化について、仕組みと公開ベンチマーク上の評価を説明しました。本稿はその数字を入口に、「改善案を作る」と「改善を証明する」を分ける運用を考えます。9月16日は技術解説の公開日であり、機能の初回提供日とは区別します。AWS公式解説
<style> .po-summary,.po-flow,.po-note{padding:1.2rem;margin:1.5rem 0;border:1px solid #cdd9eb;border-radius:16px;background:#eef4ff;color:#14263e}.po-cards{display:grid;grid-template-columns:repeat(auto-fit,minmax(230px,1fr));gap:12px;margin:1.5rem 0}.po-card{padding:1.2rem;border:1px solid #cdd9eb;border-radius:14px;background:#fff;color:#14263e}.po-card strong{display:block;font-size:1.7rem;color:#174a93}.po-table{overflow-x:auto;margin:1.5rem 0}.po-table table{border-collapse:collapse;min-width:640px;width:100%}.po-table th,.po-table td{padding:.8rem;border:1px solid #cdd9eb;text-align:left}.po-table th{background:#e8effb;color:#14263e}.po-chart{padding:1.2rem;border:1px solid #cdd9eb;border-radius:16px;background:#fff;color:#14263e}.po-row{margin:1rem 0}.po-row span{display:block;font-size:.95rem}.po-track{height:22px;background:#e4eaf2;border-radius:4px;overflow:hidden}.po-bar{height:100%;background:#2563eb}.po-bar.experimental{background:#147b6c}.po-flow ol{display:grid;grid-template-columns:repeat(auto-fit,minmax(150px,1fr));gap:10px;padding-left:1.3rem}.po-flow li{padding:.7rem;background:#fff;border-radius:10px}.po-note{background:#fff7e8;border-left:5px solid #ad6100}.po-summary p:last-child,.po-note p:last-child{margin-bottom:0} </style>① 実行記録を分析してプロンプト修正を提案し、評価で採否を決める。
② AWSの評価では、短時間の改善と高い到達スコアにトレードオフがある。
③ 公開ベンチマークの最高値を、自社業務の成功率と読み替えない。
エージェントの品質は、最後の回答文だけでは分かりません。間違った検索条件、不要なツール呼び出し、確認不足など、途中の判断が結果を左右します。
実行記録の「トレース」は、こうした行動を追うための材料です。AgentCore optimizationは、トレースと対象の評価基準を使い、システムプロンプトやツール説明の改善案を生成します。設定を版管理するconfiguration bundlesと、実トラフィックで比較するA/B testingも提供されています。最適化の公式概要
前回の提案・検証・実行を分離する記事は、本番操作の権限境界がテーマでした。今回はエージェントの設定変更を、測定して採用する工程がテーマです。
AWSはSingle Agent Reflectorと、実験的なオープンソースのSub-Agent Reflectorを比較しています。前者は単一の分析役、後者は個別トレースを分担分析する設計です。表は公式記事のAppWorld評価から必要な指標だけを整理しました。評価条件・元表
| 手法 | 成功率 | 最適化時間 | ターン数 |
|---|---|---|---|
| GEPA | 79.63% | 108分 | 100 |
| MIPROv2 | 74.40% | 216分 | 100 |
| Single Agent Reflector | 81.55% | 6分 | 20 |
| Sub-Agent Reflector(実験的) | 95.83% | 193分 | 100 |
横軸は0〜100%。同一の尺度・始点で表示。
評価の分析モデルはOpus 4.6、タスク実行モデルはSonnet 4.5です。WebShopではSingleが78.31%、Sub-Agentが79.15%でしたが、こちらの指標名はRewardで、AppWorldの成功率とは異なります。最適化時間は本番リクエストの応答時間ではありません。公式評価
本稿はAWSの報告値を確認・再表示したもので、独立した再実験ではありません。提供元の結果であること、設定探索後の最高値であることを踏まえて読みましょう。
AppWorldは複数アプリをAPI経由で操作するシミュレーション環境です。タスクは状態や実行結果に基づくテストで評価されます。単に回答が自然かどうかではなく、環境に対して必要な操作ができたかを見るためのベンチマークです。AppWorld公式サイト
WebShopは、商品要件に合うものを探し、選択・購入する模擬EC環境です。報酬は属性、種類、オプション、価格などの一致を使って計算されます。部分的な一致にも情報がある報酬を、取引の完全成功件数と同じものとして扱うべきではありません。WebShop公式サイト
AgentCoreのconfiguration bundleは、プロンプト、モデルID、ツール説明などの変更不能な版付きスナップショットです。変更の対象を記録できるため、「どの設定で失敗したか」を追いやすくなります。bundleは必須ではなく、別のruntime endpointで検証することもできます。設定と最適化
A/B testingはGatewayを通して二つの候補にトラフィックを振り分けます。同じruntime session IDは同じ候補に固定されるため、会話の途中で設定が変わる比較を避けられます。コード変更も含むなら別ターゲット、設定だけならbundleという選択肢があります。A/B testing仕様
ただし、機能があるだけで良い実験になるわけではありません。以下は本稿の編集上の導入提案です。
これは説明用の設計例で、AWSの顧客実績ではありません。対象は、問い合わせを読み、社内手順を探し、回答案を出すエージェントとします。
例えば、正答率だけが改善しても、1件の費用が大きく増えたり、必要な確認を省いているなら採用を見送る余地があります。「長いプロンプトほど良い」「分析役が多いほど良い」と決めず、改善速度と許容費用から選びましょう。
これらは編集上の見通しです。今回の数字から、自社の工数削減や投資回収率を直接計算することはできません。
自動最適化は、評価基準の弱点を増幅することがあります。採点が「丁寧な文章」を重視しすぎると、正しい処理より説明の長さが優先されかねません。評価用データに似た案件だけが改善しても、未知の案件で通用するとは限りません。
また、A/Bの統計的な有意差は、変更の業務上の価値や安全性を保証しません。少数の重大な誤操作を平均点で隠さないため、重大事故は別の不採用条件として扱うことをおすすめします。比較中にモデル、検索索引、ツール仕様まで同時に変えると、どの変更が効いたのか分かりにくくなります。
確認すべきなのは、ベンチマークの最高値だけではありません。自社の言語・案件・権限で再現するか、最適化にかかるモデル費用が許容範囲か、設定を戻せるかが重要です。利用前には、対象リージョン、機能の提供状況、CLI・SDKの版、評価とトレース保存に必要な権限も公式文書で確認してください。
プロンプト改善を「うまい言い回し探し」から「測定可能な変更管理」に移せるか。今回の発表は、その運用を考える材料になります。
最終確認日:2026年9月17日(日本時間)。評価値は9月16日公開のAWS公式解説に基づきます。導入例と採用条件は本稿の編集上の提案です。