「社内版ChatGPTを作りたい」「機密文書をAIに読ませたい」「問い合わせ対応を自動化したい」。そんな要望からDifyを調べ始める人が増えています。

ところが、セルフホストできるAI製品はどれも似た言葉を使います。RAG、エージェント、ワークフロー、ツール連携——機能表だけでは違いが見えません。

選び方の鍵は、製品名ではなくAIをどこに置くかです。社員が話す「入口」、回答を作る「AIアプリ」、AI内部の「推論フロー」、メールやCRMを動かす「業務実行」は別の役割です。本記事では、この4層に分けて7製品を比較します。

30-SECOND GUIDE

30秒で選ぶなら

AIアプリを公開
Dify
RAG・ワークフロー・APIを一体化
AIフローを細かく設計
Flowise / Langflow
部品をつないで柔軟に実験
業務を自動実行
n8n
SaaS・DB・メールとの連携が主役
社内AIチャット
Open WebUI / LibreChat
複数モデルを一つの画面で利用

全体像:セルフホストAIは4層で考える

LAYER 1

利用者の入口

Open WebUI / LibreChat / AnythingLLM

社員が会話し、ファイルを渡し、モデルを選ぶ場所。

LAYER 2

AIアプリ

Dify

社内FAQや文章生成など、目的を固定したアプリを配る場所。

LAYER 3

AI内部処理

Flowise / Langflow

検索、モデル、ツール、分岐を細かく組み立てる場所。

LAYER 4

業務実行

n8n

メール送信、CRM登録、承認、定期実行を担う場所。

一つの製品で複数層をカバーできますが、強みの中心は異なります。Difyにチャット画面はあっても、全社共通AIポータルならOpen WebUIやLibreChatの方が自然です。n8nにもAIエージェントはありますが、強さの源泉は多数の業務サービスをつなぐ自動化にあります。

7製品の比較表

製品主役RAG業務連携AIフロー利用者向けUI導入難度最も得意な業務
Difyアプリ社内FAQ、顧客向けAI、定型生成
FlowiseAIフロー中〜高高度RAG、エージェント、組み込み
LangflowAIフロー中〜高試作、Python系AI部品の検証
n8n自動化×メール、CRM、承認、定期処理
Open WebUIチャット低〜中ローカルAI、全社チャット、文書検索
LibreChatチャット中〜高複数クラウドAI、エージェント、MCP
AnythingLLM文書+チャット小規模チームの文書QA、個人利用

◎=その製品の中心的な強み、○=実用的、△=可能だが主役ではない、×=別のUIや仕組みを組み合わせたい。評価は機能の有無だけでなく、設計思想と実務での扱いやすさを含む相対評価です。

ポジショニングマップ

業務を自動実行 ← → 人が対話 すぐ使う ← → 細かく作る n8n Dify Flowise Langflow AnythingLLM Open WebUI LibreChat

1. Dify:最も「完成したAIアプリ」に近い

Difyは、プロンプト、モデル、ナレッジベース、ワークフロー、ログ、API、公開画面を一つにまとめたAIアプリ開発基盤です。公式資料では、主要LLM、RAG、エージェント、ローコードワークフロー、APIを統合し、試作から本番提供までを支える位置付けです。

得意な業務は、社内規程FAQ、製品サポート、議事録や報告書の生成、問い合わせ分類、Webサービスへ組み込むAI機能です。非エンジニアがプロンプトやナレッジを更新し、開発者がAPIやインフラを担当する分業もしやすいでしょう。

メリットは、RAGから公開までの導線がまとまり、成果物を「アプリ」として管理しやすいこと。デメリットは、複数コンテナやデータベースなど構成要素が多く、アップデート、バックアップ、認証、監視まで考えると運用は軽くありません。また、一般的なSaaS自動化はn8nほど主役ではありません。

2. Flowise:高度なRAGとエージェントを視覚的に設計

Flowiseは、LLM処理の内部を部品単位で組み立てたい人向けです。初心者向けのAssistant、単一エージェントやRAG向けのChatflow、分岐・ループ・Human in the Loop・複数エージェントまで扱うAgentflowがあります。公式資料では100以上のデータソース、ツール、ベクトルDBとの接続や、air-gapped運用も案内されています。

得意な業務は、検索方法を細かく調整する高度RAG、複数エージェント、既存サービスへのチャット埋め込みです。メリットは設計自由度と、AIの処理経路が図として見えること。デメリットは、自由度のぶんLLM、検索、ベクトルDB、評価の知識が必要なことです。さらに公式資料上、フローIDを知る人が実行できる初期状態があり、公開時はAPIキーやネットワーク制限を忘れてはいけません。

3. Langflow:Python系AI開発の試作と共有に強い

Langflowもドラッグ&ドロップ型ですが、開発者がAI部品を試し、APIやMCPツールとして外へ出す使い方に向きます。公式のビジュアルエディターでは、LLM、データソース、エージェント、MCPサーバーなどを接続でき、生成されたAPI例、JSONエクスポート、Web埋め込みも提供されます。

得意な業務は、RAG構成の比較実験、独自コンポーネントの検証、MCP対応ツールの試作です。メリットは、処理の流れを理解しながら柔軟に作れること。デメリットは、全社員向けポータルや業務承認の完成品ではない点です。作ったフローを誰が認証し、監視し、利用者へ届けるかは別途設計が必要です。

4. n8n:AIそのものより「AIを含む業務」を動かす

n8nは、APIを持つアプリ同士をローコードでつなぐ自動化ツールです。AIは主役というより、分類、抽出、要約、判断を担う強力なノードとして業務フローに入ります。

たとえば「メール受信 → 添付PDFから項目抽出 → 人が承認 → 会計システムへ登録 → Teamsへ通知」のような処理が得意です。メリットは外部サービス連携、トリガー、再実行、分岐を業務単位で扱えること。デメリットは、社員が対話する完成したAIチャット画面は別に用意した方がよいことです。また公式はn8nをfair-codeと説明しており、一般的なオープンソースと同じだと思い込まず、社外提供や商用組み込みではライセンス確認が必要です。

5. Open WebUI:ローカルLLMを含む「社内AIの入口」

Open WebUIは、OllamaなどのローカルモデルとOpenAI互換APIをまとめて利用できる、使いやすいAIチャット基盤です。文書を登録するKnowledge、プロンプト、ツール、権限管理を備え、完全オフライン構成にも対応します。

得意な業務は、機密文書を使う社内チャット、複数モデルの使い分け、閉域環境でのAI活用です。メリットは導入後すぐ利用者価値が見えやすく、AIポータルとして育てやすいこと。デメリットは、本格的な業務フローの視覚設計ではDifyやn8nに及ばない点と、モデルをローカルで動かす場合はGPU、速度、モデル更新の運用が増える点です。

ライセンスにも注意が必要です。現行コードにはOpen WebUI Licenseが含まれ、原則としてブランド表示の維持が求められます。50人以下などの例外はありますが、ホワイトラベル製品にする場合は必ず公式条件を確認してください。

6. LibreChat:複数のクラウドAIを一つの高機能チャットへ

LibreChatは、複数プロバイダーのモデルを一つのChatGPT風UIで扱う用途に強いセルフホスト型Webアプリです。エージェント、RAG、MCP、Web検索、コード実行、Artifactsなど、対話から仕事を進める機能が豊富です。

得意な業務は、部署ごとに異なるAIをまとめること、MCPツールを使うエージェント、コードやファイルを扱うナレッジワークです。メリットはチャット体験の広さ。デメリットは、Docker構成でもMongoDB、検索、RAG APIなど複数サービスになりやすく、設定項目が多いことです。シンプルな文書QAだけなら過剰になることがあります。

7. AnythingLLM:小さく始める文書QAに向く

AnythingLLMは、ワークスペースごとに文書と会話を分け、ローカルまたはクラウドのモデルを使う構成を比較的簡単に始められます。

得意な業務は、個人や小規模チームの文書検索、案件別のナレッジ整理、まずローカルAIを試すこと。メリットは「文書を入れて質問する」までが分かりやすいこと。デメリットは、複雑な承認フローや大規模なAIアプリ公開では専用基盤に劣ることです。利用規模が大きくなる前に、認証、監査ログ、バックアップ、権限分離を評価しましょう。

業務別おすすめ構成

やりたい業務 第一候補 組み合わせるなら 理由
社内規程・マニュアル検索 Dify / Open WebUI ローカルLLM、ベクトルDB Difyはアプリ化、Open WebUIは全社チャット化が得意
顧客向けFAQボット Dify n8n 公開UI/APIとRAGをまとめ、CRM登録や通知をn8nへ
請求書・メール処理 n8n DifyまたはLLM API 業務システム接続と再実行が中心だから
高度なRAG研究・検証 Flowise / Langflow 評価・監視基盤 検索器や分岐を細かく比較できる
閉域網の社内ChatGPT Open WebUI Ollama等のモデル実行基盤 オフラインと複数利用者のUIに強い
複数AI+MCP+コード実行 LibreChat MCPサーバー 会話を起点に多様なツールを扱える
個人・小規模の文書QA AnythingLLM ローカルLLM 構成を小さくしやすい

セルフホストのメリット

  • データの置き場所を選べる:会話履歴、文書、ベクトルDBを自社環境へ置ける。
  • モデルを固定されにくい:クラウドLLM、OpenAI互換API、ローカルLLMを用途で選べる。
  • 社内システムへ近づけやすい:閉域API、社内DB、ファイルサーバーへ接続しやすい。
  • UIと運用を統一できる:部署ごとにばらばらなAI利用を共通基盤へ寄せられる。

デメリットと、よくある誤解

セルフホストは「データが絶対に外へ出ない」という意味ではありません。外部LLM API、埋め込みAPI、Web検索、解析サービスを設定すれば、その経路からデータは外部へ送られます。通信先を洗い出し、機密区分ごとに使えるモデルとツールを制限する必要があります。

また、ソフトウェア利用料が無料でも、GPU、ストレージ、バックアップ、監視、障害対応、アップデート検証には費用がかかります。とくにRAGは「PDFを入れれば正確になる」わけではなく、文書更新、OCR、分割、検索評価、アクセス権の継承が継続業務になります。

導入前の5点チェック

  1. 通信先:LLM、埋め込み、検索、テレメトリーはどこへ接続するか
  2. 権限:元文書の閲覧権限をRAGでも維持できるか
  3. 運用:更新、バックアップ、監視、障害復旧の担当者がいるか
  4. 評価:自社の質問30〜50件で正答・根拠・拒否を試したか
  5. ライセンス:社内利用、社外提供、ブランド変更の条件を確認したか

結論:一つに全部やらせない

最も失敗しにくい考え方は、会話の入口、AIアプリ、業務実行を分けることです。たとえば、社員の入口はOpen WebUI、社内FAQはDify、メールやCRMへの実行はn8nに任せます。高度なRAGだけFlowiseやLangflowで検証し、良い構成をAPIとして組み込む方法もあります。

最初の一台なら、顧客や社員へ用途別アプリを配るならDify、既存業務を自動化するならn8n、まず安全な社内AIチャットを広げるならOpen WebUIが分かりやすい選択です。製品名から決めず、最初の利用者20人と最初の業務1つを決めてから選ぶと、運用負債を小さくできます。

参考資料

最終確認日:2026年9月12日

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